AI主導の未来に向けたAIに焦点を当てたビジョン

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ピアソンVUEの最高技術責任者(CTO)グレッグ・バーゼスに聞く

ピアソンVUE で配信する試験は、成長の促進や、試験認定団体がその業界で期待に応えるための助けになるなど、世界中のコミュニティで直接的なプラスの効果を生み出しています。このシリーズでは、ピアソンVUE がこのような貢献を実現する方法について掘り下げるために、当社のビジネスに携わり、アセスメントの特定の分野で持続的な影響力を持つ人物にインタビューします。

ピアソンVUE の最高技術責任者(CTO)であるグレッグ・バーゼスは、日々のあらゆる場面、特にピアソンVUE での役割において AI を積極的に活用しています。結果重視のマインドセットとビジネス変革の実績、そして30年におよぶ素晴らしいキャリアを持つグレッグは、まさに最適なタイミングでピアソンに加わりました。2024 年、ピアソンVUE は AI 中心のビジョンをさらに推し進め、テクノロジーサービスの拡充に本格的に着手しました。  ここでは、新たに登場するテクノロジーがどのようにカスタマーエクスペリエンスを変えていくのか、そして AI 主導の未来へ進むうえで、なぜ教育がとりわけ重要なのかについて、自身の考えを語ります。

グレッグ・バーゼス
ピアソンVUE、最高技術責任者(CTO)

1. まずはあなた自身のことを少し聞かせてください。現職のピアソンVUEの最高技術責任者(CTO)になるまでの道のりを教えてください。

私は 30 年ほどテクノロジー業界で働いてきました。キャリアの初期には、消費財向けの営業支援の自動化に特化したテクノロジーのスタートアップに携わっていました。その後、IBM に移り、小売業向けの POS システムのイノベーションを推進しました。この経験を通じて、ビジネス変革への情熱が本格的に形になりました。さらにメディアと通信業界で20年間を過ごし、ビジネスを近代化し、革新し、将来への備えを目的としたエンドツーエンドの製品とテクノロジーの変革をリードしてきました。

振り返ってみると、テクノロジーの進歩とイノベーションがあったにもかかわらず、キャリア全体、そして現在のピアソンVUEでも一貫しているのは「変革」です。それぞれの変革の取り組みが次の変革を生み出しますが、共通するテーマもあります。それは、顧客価値の加速、成長の促進、カスタマーエクスペリエンスの向上、そしてアイデアをより早く実現することで効率を生み出すことです。

このような、AI が私たちの周りのすべてを変革しているダイナミックな成長期にピアソンVUEでリーダーシップを発揮できることは非常に刺激的な体験です。AI のテクノロジーとともにピアソンVUE がどのように進化し、拡大していけるのかを探求することに大きな意欲を持っています。それによって、スキルと能力がより個別化され、正確に評価できるようになると同時に、試験のセキュリティの信頼性も高めていきたいと考えています。AI は私たちの業界の進歩を促進し、世界中に機会を平等に広げる可能性を持っているため、誰もが自分の持つ能力を最大限に発揮できるチャンスを得られます。 

2. 1日の流れはどのようなものですか。

米国での私の仕事前のルーティンは、早朝から始まります。世界と業界全体のトレンドと主要な動向をチェックすることから一日を始めるのが好きです。これによって、ビジネスと根本的な戦略に影響を与える重要なテーマや大きな変化について、最新の視点を保つことができます。

私の日常はとても活動的で、戦略、実行、イノベーション、そして業務効率のバランスを常に保っています。経営陣と現場の連携を目的としたミーティングを毎日行っています。それ以外の時間は、顧客の要望に応え、ビジネスの成長を促進し、プロセスを最適化して、将来のイノベーションを起こすために、製品とサービスの提供を確実に成功させることに注力しています。

また、事業規模が大きく、展開地域も多岐にわたるため、少人数で議題を絞った会議を多くおこないます。これらの会議では、戦略の策定と見直し、主なプログラムとプロジェクトの迅速な進行、ビジネスの運営、製品の計画、デザインのレビューとデモ、エスカレーションの対応、コーチング、メンタリング、そして、試験認定団体と受験者からの率直なフィードバックの収集など、さまざまな内容を話し合います。ピアソンVUE はテクノロジーと製品によって支えられているサービス企業なので、設計、開発、テスト、展開、運用などのすべての段階でテクノロジーを活用して会社の能力とパフォーマンスをどのように向上できるか常に考えています。さらに、一日の中で予定にないディスカッションに参加するのも好きです。日々のルーティンにとらわれすぎないように、自分自身には常に挑戦し続けなければなりません。 

3. 今後 5 年間で、AI の進化によって受験者が最も恩恵を受けるのはどんな分野だと考えていますか?また、顧客は AI の進化から何を得られると思いますか?

テクノロジーの世界で 5 年というのはとても長い時間ですよね?特に、この 1 年だけでも AI の変化のスピードは目覚ましいものがありました。  ピアソンVUE からは、近々、画期的な AI テクノロジーが続々と登場する予定です。  最近では、「Pearson Virtual Assistant」という画期的な生成 AI ツールをリリースしました。このツールによって、受験者は試験の準備段階での不明点をリアルタイムに質問して回答を得られるようになります。  AI は試験の実体験の向上にも中心的な役割を果たしています。チェックインや受付のプロセスからストレスと摩擦を取り除くことで、受験者が試験に集中できるようにします。  

未来のことは分かりませんが、5 年間の AI の進化によって、ピアソンVUE は各受験者に合う、よりカスタマイズされた、状況に応じた受験体験を提供できるようになると予想しています。今後は、より直感的でコンシェルジュのような、受験者がより快適に試験の準備を進められるサービスが登場するでしょう。試験の登録、予約、支払い、試験における配慮の申請、適切なサポートの提供など、AIはさまざまな面で受験者をサポートしてくれるようになります。近い将来、これらの AI ツールは個人ごとの情報を記憶し、「学ぶ、準備する、受験する」という一連のプロセスのどの段階かに合わせて、やり取りの内容を最適化できるようになると考えています。  

やがて、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)を活用した、さらに没入できる学習と評価の方法が登場するでしょう。すべての AI の導入にはヒューマンインザループ(人間が介在する仕組み) を引き続き取り入れ、試験結果の信頼性を確保していきます。  

現在は重要な試験の問題作成を AI を活用して拡大しつつ、第2世代の AI センサー(試験中に情報を検知し、データを処理するシステム)を導入しています。これにより、AI の支援を受けた試験の監督と記録、および検証の継続的な進化が促進されています。AI は、オンライン監督試験とテストセンター試験のセキュリティと信頼性を最適なレベルまで高めるうえで、重要な役割を果たせると考えています。 

4. ピアソンVUE は AI を活用する業界向けにどのように人材を育成していますか? 

人々に AI を使いこなす自信を持たせるには、教育がもちろん重要です。AI のツールを効果的かつ責任を持って倫理的に使う方法を指導することが求められます。ピアソンVUE では、「Generative AI Foundations認定プログラム」を提供しています。これはキャリアに不可欠なスキルを身につけるための取り組みで、顧客だけでなくピアソンVUE の従業員も対象にしています(今後 1 年以内に多くの従業員がこの資格を取得する機会が提供されます)。あらゆる職種のプロフェッショナルが AI を効果的かつ責任を持って使えるようにスキルアップすることは非常に重要です。AI を理解する人が増えることで、AI の導入が促進され、正しい方法で活用されるようになります。アセスメント分野のグローバルリーダーとして、私たちは新しいテクノロジーの教育者としての役割を非常に重く受け止めています。「Pearson Skilling Suite」など、テクノロジースキルのギャップに対応するトレーニング施策に加えて、コア技術の構築と投資を継続しながら、AI をより多くの製品とサービスに大規模かつ責任ある方法で導入し続けています。

5. ビジネス全体での AI 導入の成功事例を教えてください。 

AI はピアソンVUE 全体で重要な役割を果たしています。例えば、試験の不正の分析においては、AI を使って分析用の不正検知モデルを作成し、フォレンジック能力を高めています。これにより、特定の行動や複数の行動の組み合わせを対象に、不正の可能性を判断できるようになりました。本人確認にも AI を使用し、受験者が提示した本人確認書類が政府発行の有効な書類であることを検証しています。また、顔認証にも AI を活用し、試験を受けている受験者が予約および受付した本人であることを確認しています。さらに、試験を通して声の一貫性を検証するために、音声分析にも AI を利用しています。

近年は、多くの企業が AI を開発して提供すること自体は簡単になったと言えるでしょう。しかし、開発を繰り返し、安全かつ大規模に、そして個人情報の保護、データの保護、差別の防止、説明責任などの現地の法律を順守しながら運用するのは決して簡単ではありません。

ピアソンVUE 全体への AI の導入は、ある原則に基づいて進められました。その原則とは強固な土台を築くことで、その土台は教育にあります。ピアソンVUE の顧客、受験者、そして一般の人々の利益を守るために、AI をどこで使うべきか、使うべきでないかについてのガイドラインを設けました。さらに、AI の責任ある利用について従業員に教育することも、AI が中心となる新しい時代において極めて重要になります。

7. CTO  としての役割の一環として、AI をどのように使用していますか?  

AIツールは、テクニカルレポート、メール、ドキュメントの要約とスプレッドシートの分析が得意なので、自分の考えをまとめて、情報に基づいた意思決定をすばやく行うのに役立っています。AI を使ってリサーチし、膨大な情報を整理および集約して、分かりやすい概要にまとめています。また、社内のコミュニケーションを簡素化および効率化したり、視覚的なプロトタイプやメッセージ伝達に役立つ画像を作成したり、データセット内のパターンや異常を確認するためにも AI を使っています。会議の要約、メールの返信案、下書きの作成、情報の迅速な検索など、管理職の業務にも AI は欠かせません。AI ツールを使って自身の生産性と影響力を日々高めています。