AIがオンライン試験のセキュリティ、信頼性、公平性を高める5つの方法

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オンライン試験の普及で認定資格の取得の機会は広がりましたが、試験の公正性を維持する新たな課題も生じています。従来の不正手法が技術的に高度化する中、AI は問題視されがちですが、責任を持って設計・運用することで AI は強力な解決策になります。 そのための5つの方法を、ピアソン・プロフェッショナル・アセスメント 最高技術責任者(CTO)が解説します。ただし、オンラインでの監督がすべての用途に適しているわけではない点は認識しておく必要があります。

グレッグ・バーゼス
ピアソン・プロフェッショナル・アセスメント 最高技術責任者(CTO)

 以下は、AI がオンライン試験のセキュリティ、信頼性、公平性を高めている 5 つの方法です。

  • オンライン試験の AI は単一のツールではなく、多層的なシステムで構成されるインテリジェント・チェックシステムです。 
    オンライン監督試験では、物理的およびデジタルの試験環境全体において顔認証だけでなく、複数の AI センサーが連携して機能します。

  • AI は人間に代わり判断するのではなく、判断を補佐する役目を担います。 
    AI は異常を検知・通知しますが、公平性と説明責任を保つため、最終的な決定は人間の試験監督員が行います。

  • 最大の進歩は AI センサー自体ではなく、検知されたデータの解釈方法です。 
    AI は検出内容を 1 つ 1 つのインシデントとしては扱わず、時間軸で不審な行動のパターンを分析します。

  • セキュリティ強化は受験者のストレスを増やすわけではなく、認定資格の価値を高め、受験体験の向上を可能にします。 
    自動化によって受験者のチェックイン時間を迅速にし、全体的な受験体験を効率化します。

  • オンライン監督には、進化する脅威に先行して対応するための継続的な投資が必要です。 
    試験セキュリティの維持は、繰り返し行う調整、評価、および人間とAIによる監視を必要とする継続的なプロセスです。

1. オンライン試験の AI は単一のツールではなく、多層的なシステムで構成されるインテリジェント・チェックシステムです。

よくある誤解として、AI を搭載したオンライン監督では、受験者の本人確認時の顔認証だけに AI が利用されていると思われています。実際には、顔認証は高度なシステムの 1 つに過ぎず、セキュリティを向上させるために連携して機能する複雑なテクノロジーの集合体です。

単一データのチェックだけでは不十分なのが現実です。そのため、効果的なオンライン監督では、AI 強化されたセンサーの多層的に組み合わせたシステムが不可欠であり、各センサーが受験者の本人確認や受験資格の確認から、物理的およびデジタルな試験環境のセキュリティに至るまで、さまざまな要素を分析します。

以前からこのようなシステムだったわけではありません。初期に業界で導入された AI 支援のオンライン監督システムは限定的で、場合によっては誤検出が発生していました。これを解決する手段は、単独システムから統合システムに移行することでした。今日の次世代センサーはその成果です。より高い精度、焦点、連携を実現できるように設計されています。

このような多層モデルは総合的に判断するために設計されています。複数のシグナルを知的に組み合わせて、セキュリティ上の脅威を確認することで、不要な情報を効果的に排除し、単一のデータポイントではなく、より広範で信頼性の高い知的シグナルに基づいてセキュリティ上の意思決定が行われるようにしています。

2. AI は 人間に代わり判断するのではなく、判断を強化する役割を担います。

根強い誤解として、AI が試験の不正を自動で判断すると思い込まれています。

しばしば受験者から「AI で検知された」という体験談を聞きますが、これが不正の自動判定と解釈されてしまっています。一方、ピアソンのオンライン監督のアプローチは違います。ピアソン・プロフェッショナル・アセスメントでは、試験セキュリティに関するすべての重要な判断は人間中心に決まります。AI は、リアルタイムに試験を監視する訓練を受けたプロフェッショナルの試験監督員の代わりになるものではなく、支援するために使用されています。AI の役割は、複数のシグナルを同時に監視し、異常な眼球運動や背景の雑音など、潜在的な異常や挙動を検出して知らせることです。

AI は試験監督員の「第二の目」のようなもので、一度に複数の試験セッションを、より一貫して見ることができるよう手助けをします。オンライン試験のプロセスで AI がセキュリティ上の懸念を検出した場合、介入は人間主導であり、これは、重要な試験の公平性、説明責任、信頼性の確保に必要不可欠です。 

当社のセキュリティ対策は試験が終了しても続きます。解答が提出された後も、不正行為を探し続けます。これは、数日~数週間後に詳細な調査で問題が浮上することが多いためです。

3. 最大の進歩は AI センサー自体ではなく、検知されたデータの解釈方法です。

AI センサーを増やすだけで自動的にセキュリティが向上するわけではありません。重要なのは、センサーからの情報の解釈と活用方法です。例えば、受験中に受験者が一度だけ視線をそらしたり、ストレッチしたり、ちょっとした音を立てた場合、通常は低重度のフラグが発生します。問題として扱われるのは、こうした行為が繰り返された場合や複数の行動が組み合わさって規則違反の可能性を示唆する場合のみです。

単一の事象にこだわると誤解が発生しやすくなります。時間軸の行動パターンのほうがはるかに重要な情報になります。AI でシグナルを総合的に分析することで、ストレッチなどの無害な行為と本当の不審行動を区別し、不要な警告を減らしながら、監視の精度を高めることができます。

この原則を踏まえ、私たちは異常および不正検出のためのインテリジェント・センサー・アーキテクチャー(ISAAC)を開発しました。これは、オンライン試験プロセス全体で大量の情報を統合して分析する最先端のインテリジェンスエンジンです。検出された警告を個別に見るだけでなく、情報を統合してパターンを分析し、真の脅威と誤検出を区別します。単なる警告フラグの羅列ではなく、データに優先順位をつけて、試験監督員の注意を最も深刻なリスク領域に誘導します。これにより、人間の監視を最大限効果的に活用することができます。

4. セキュリティ強化は受験者のストレスを増やすわけではなく、認定資格の価値を高め、受験体験の向上を可能にします。

重要な試験では、セキュリティと利便性はしばしば相反するものとして扱われますが、必ずしもそうではありません。

AI はオンライン試験の受付手続きの多くのプロセスを効率化しました。受験者は最初に行う自動チェックインを問題なく通過すると、すぐに試験監督員の待機列に入ることができ、より早く試験セッションに進むことができます。

これにより受付のストレスが軽減され、最も重要な試験でのパフォーマンスに集中することができます。同時に、追加の確認が必要な場合は、人間の試験監督員が対応できる体制になっています。

適切に設計されたセキュリティ対策は、試験の公正性の確保に貢献すると同時に、より優れた受験体験も提供します。だからこそ、AI の発展はこの分野で非常に大きな変化をもたらしてきました。そして、試験のセキュリティが高いほど、不正行為を防ぐ効果も高くなります。これにより、認定資格の価値はさらに高まります。

5. オンライン監督には、進化する脅威に先行して対応するための継続的な投資が必要です。

AI とオンライン監督について理解すべき最も重要なことの 1 つは、これらが一度きりの導入で済むものではないという点です。試験配信の 1 つの形式として、オンライン監督には精度と公平性を維持するために、継続的な投資と機能の絶え間ない調整が求められます。  そのため、専任の人間のチームが監督し、AI と並行してシステムの実績をリアルタイムで評価・分析する「継続的なプロセス」が最適な方法になります。

AI は、公平で信頼性の高いオンライン試験を提供する貴重なツールになり得ますが、それは人間の監視によって支えられ、責任を持って設計・運用される場合に限られます。このアプローチこそが、認定資格の価値を守り、すべての受験者に成功の機会を与える信頼できる管理された環境を構築する鍵となります。

常に人間に情報共有する

オンライン試験における AI の目的は、すべての受験者に対する公平性と整合性の向上です。

これはすべてを見通す単一のアルゴリズムによって実現されるのではなく、人間の判断を補助・補完するスマートな AI センサーの多層システムによって実現されます。人間中心のアプローチは、セキュリティを強化しつつ、受験者にとってより効率的でストレスの少ない受験体験を提供します。

ISAACによる試験セキュリティの向上

コンピュータベースの試験における異常・不正の検知を実現するインテリジェント・センサー・アーキテクチャー

ISAAC

異常・不正の検知を実現するインテリジェント・センサー・アーキテクチャー

分析

センサーを使用して不正行為や不審な行動パターンを検出。

警告

不正行為や不審な行動パターンが検出されると人間に警告。

優先度付け

不正行為や行動に優先順位をつけて、セッションをリスクレベルでランク付けします。