「心理統計学はアセスメントを支える科学」 — ピアソンVUEオーストラリアおよび東南アジアの主席心理統計学者であるエドワード・フォン・リー博士に聞く

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ピアソンVUEで配信する試験は、成長の促進や、試験認定団体がその業界で期待に応えるための助けになるなど、世界中のコミュニティで直接的なプラスの効果を生み出しています。このシリーズでは、ピアソンVUEがこのような貢献を実現する方法について掘り下げるために、当社のビジネスに携わり、アセスメントの特定の分野で持続的な影響力を持つ人物にインタビューします。

今回は、ピアソンVUEの主席心理統計学者であるエドワード・フォン・リー博士(アジア太平洋(APAC)地域担当)にインタビューします。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で教育学の博士号を取得したリー博士は教育心理学と定量的メソッドを活用して、試験認定団体のアセスメントの設計と分析を改善しています。

リー博士の言葉で言えば、「心理統計学はアセスメントを支える科学」であり、ピアソンVUEがAIなどのテクノロジーを取り入れてお客さまにより良いものを提供し、プロセスを自動化し、効率を高めることに魅力を感じています。

メガネと黒いドレスシャツを着たアジア人男性

Dr. Edward Feng Li
オーストラリアおよび東南アジア地域の主任心理測定医

リー博士、まずはあなた自身のことを少し聞かせてください。博士として研究してきたことにとても興味があります。

私は、教育心理学と定量的メソッドに重点を置いた教育学の博士号を取得しています。

多様性に富んだ大学教育から多くのものを得ました。技術分野の多くの内容を深く学ぶことができたからです。また、定量的な研究メソッドのトレーニングも受けましたが、研究者としての私のスキルセットをさらに広げてくれました。この知識を応用して、私の博士研究プロジェクトのアセスメント方法を作り上げるのは楽しいことでした。

大学で強力な分析フレームワークを身に付け、測定の科学に伴う複雑さを総合的に理解することができました。そしてその内容を教育と職業の両方の分野に適用する方法も学ぶことができました。

最近、ピアソンVUEの主席心理統計学者という新しい役割に就きましたね。実際には、どんなことをするのですか?

ピアソンVUEの主席心理統計学者の職務は多岐にわたりますが、私たちのアセスメントソリューションの正確性と信頼性を常に確保すること、そしてそのソリューションをカスタマイズしてさまざまなクライアントのニーズに合わせる方法に焦点を絞っています。「主席」の役職に就いた今、さらに大きな責任を感じています。これは、チームのメンバーの成長を促すことだけではありません。日常の業務だけでなく、もっと戦略的な考えにも目を向けていく必要があります。現在はテクノロジーや製品開発など、ピアソンVUE内の他部門とのコラボレーションにより多く関わるようになりました。これは、ピアソンVUEの試験サービスのすべてをさらに高めることが目的です。ピアソンVUEが他から抜きん出ている理由は、単に業界標準に従うだけでなく、ソートリーダーであり、アセスメントのベストプラクティスを規定する革新的な手法を開拓しているからです。

あなたの1日の流れは、どのようなものですか?

日によってやることは異なります。データを分析している日もあれば、クライアントのアセスメントソリューションを作成している日もあります。また、ピアソンの他のチームと協業していることもあります。もう少し長い期間で見れば、戦略策定、チームコラボレーション、実地分析が入り混じった毎日だと思います。また、時間を確保して心理統計学の方法論やテクノロジー、特に生成AI に関しての最新情報をチェックするのが好きです。

アセスメントを開発する場合、あなたは社内外のさまざまな関係者とコラボレーションしていると思います。そのプロセスについて、少し話してもらえませんか?

コラボレーションは効果的なアセスメント開発の中核です。社外では、クライアントと協力して、クライアント独自のニーズや課題の理解に務めています。これは非常に重要なことで、「模範的な」やり方がすべての試験認定団体に適するとは限らないからです。クライアントに詳細な知識がないことも多いので、重要な原則をわかりやすく説明し、聞く人が途方に暮れてしまわないように注意する必要があります。強力で戦略的な計画を策定するには、全員が同じ認識を持っていることが不可欠です。社内では、多くのケースでビジネス開発チームと緊密に協力してクライアントのニーズを最初に評価します。次に社内のプログラム管理部門、コンテンツ開発部門、試験配信部門の意見を聞くことで、ピアソンVUEのアセスメントが綿密に企画され、十分に練り上げられ、クライアントにシームレスに提供されるようにします。このプロセスにより、ピアソンVUEが提供するソリューションをそれぞれのニーズに合った、効果的で実用的なものすることができます。

あなたは個人として、高いスキルを持つ心理統計チームの重要性/価値はどんなことだと思いますか?

心理統計学はアセスメントを支える科学です。高いスキルを持つ心理統計チームは試験作成に客観的な見方をもたらし、アセスメントを公正かつ妥当、信頼性の高いものとすることができます。私たちの持つ専門知識を活用すれば、さまざまな組織において表面からは見えない複合的な概念を評価するという複雑な問題を解決することができます。これには、評価する複合的な概念を定義することや、その概念に対する受験者の理解を試験問題で的確に評価できるようにすることなどが含まれます。技術的なスキルに加えて、心理統計チームには「ソフトスキル」も要求されます。たとえば、各クライアント独自のニーズを理解し、ピアソンVUEのテクノロジーソリューションがどのようにクライアントの評価を向上できるのかを理解してもらうには、優れたコミュニケーションスキルが必要です。強力なコミュニケーションスキルは、クライアントとの長期的な関係構築に役立ちます。加えて、試験作成プロセスにもソフトスキルは重要です。アセスメントの準備には多くのやり取りが関わってくるからです。標準設定や業務タスク分析ワークショップの促進などがその例です

高水準の資格授与を続けている試験認定団体/クライアントに対して、どのようなアドバイスがありますか?

試験内容と心理統計手法の両方の最新の変化を反映させるため、アセスメントを定期的に見直して更新することが非常に重要です。試験認定団体が行動方針に疑念をもったときは、まず心理統計学者に相談することが重要です。模範的なアセスメント実施に必要な労力やリソースの量に圧倒されてしまうこともあるでしょうが、「完璧を目指しすぎて本末転倒にならない」ようにしてください。どんな小さな改善でも、意味はあります。

東南アジア地域はピアソンVUEのビジネスの重要市場であり、ワクワクするような新たな立ち上げがあります。このダイナミックな地域で、心理統計サービスが最も必要とされるのはどこでしょうか?

オーストラリアのメルボルンを拠点とする心理統計学者として、この地域が近年急速に発展するのを目にしてきました。資格取得者の能力を証明し、認定資格の信頼性を守るために、強力なアセスメント方法を必要とする試験認定団体がどんどん増えています。コンピュータ・ベース試験に関するピアソンVUEの専門知識と世界に広がるネットワークは、この地域で試験プログラムを拡大する試験認定団体には魅力的であり続けるでしょう。

現在、AIが脚光を浴びていますが、今後数年間で測定方法論はどのような進化を遂げると思いますか?

難しい質問です。専門家の将来予測は間違っていることが少なくないからです。これは私の考えですが…AIを心理統計に組み入れる動きは新しいものではありません。たとえば、カンニングや試験問題のエネミーアイテム(重複したり、他の問題のヒントになったりする問題)の検出には機械学習が利用されています。AIに対して現在重視されていることは、おおむね大規模言語モデル(LLM)の開発と導入です。LLMは、翻訳や概要作成、テキスト生成などのテキストベースのタスクから、コーディングや画像生成まで、さまざまなタスクを行う能力があることが証明されています。最近、Sora(Open AIツールの1つ)が、文字によるプロンプトから高品質の短いビデオを生成しました。

それでも、LLMは人間と機械の仲介をするものだと私は考えています。LLMは人間が求めるものをよりよく理解し、それに従ってやりとりすることができる、という意味です。たとえば、数字を計算したいならLLMよりも計算機の方が信頼性が高いでしょう。考えてみてください、ディスクオペレーティングシステム(DOS)を使ってコンピュータとやりとりしていた時代を。または、WindowsのようなOS上のグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)のおかげでコンピュータがどれほど簡単に使えるようになったかを。今や、LLMを使えば、コンピュータやソフトウェアに自然言語で指示を出し、複雑なタスクを実行させることができる時代になりつつあります。テクノロジーがさらにアクセスしやすく、直感的になっています。LLMのこの能力を考えると、シミュレーション・ベースの試験がピアソンVUEのアセスメント・ツールキットの中でさらに実践的になるだろうと思います。これまでは評価が難しかったスキルや能力を活用できる新たな可能性になります。