- 人材&リーダーシップ
ピアソンVUE が配信する試験は、成長の促進や、試験認定団体がその業界で期待に応えるための助けになるなど、世界中のコミュニティで直接的なプラスの効果を生み出しています。このシリーズでは、ピアソンVUE がこのような貢献を実現する方法について掘り下げるために、当社のビジネスに携わり、アセスメントの特定の分野で持続的な影響力を持つ人物にインタビューします。今回は、ピアソンVUE の教員認定試験部門を率いる E・ワイアット・ゴードンに話を聞きました。現在、ピアソンVUE の教員認定資格試験は、米国の教員が受験する教員認定資格試験の 65% 以上を提供しており、優れた教員を育成するために不可欠な役割を担っています。
今日の教育環境においては、効果的な教員の育成がこれまでになく重要になっています。教育システムは大規模な改革の渦中にあり、教員不足や十分に教育されていない教員の増加といった課題に直面しています。同時に、生徒と教師の双方による AI の活用が拡大し、教育環境そのものが変革されつつあります。元教師であり現在はビジネスリーダーでもあるワイアットは、AI の可能性を最大限に活用して、「教えること」と「学ぶこと」を探求するためにどうすればよいかを自身の視点と共に述べています。
ワイアット・ゴードン (博士)
ピアソンVUE
シニア・バイスプレジデント
および 評価システム部門長
Q. まずは自身について、教師としての経験、そしてピアソンの評価システム事業を率いるまでの経緯を聞かせてください。
私は、学びこそがチャンスを開き、社会の流動性を高める鍵であると常に信じてきた教育者一家の一員として生まれました。私の父、叔母、姉、祖父、祖母は皆教授で、母と叔父は小学校の教師をしています。このような環境で育った私は、教育が社会の最も困難な課題に取り組み、人々が成長できる道を切り開く力を持つことを目の当たりにしてきました。
教師として教室で過ごした時期もありましたが、私の関心は一貫して政策、ビジネス、教育の交わる分野にあり、学習成果を大規模に向上させる教育システムを設計・提供することに取り組んできました。その背景が私のリーダーシップの考え方を形づくりました。それは、現場の経験者としての視点と、政策立案や組織成長を見据えた戦略的な視点を融合させるアプローチです。
現在はピアソンの教員認定部門を率いる立場として、National Evaluation Series、edTPA(教員のパフォーマンス評価)、そして多数の州ベースの教員評価システムなどのプログラムを指導することで、家族が築いてきた教育への取り組みを受け継ぐことができていることを光栄に思っています。私たちの使命は、教育人材ソリューションの設計と導入を支援することです。なぜなら、教員の成功が学生の学習につながり、その学習がすべてを変えるからです。
私は、学びこそがチャンスを開き、社会の流動性を高める鍵であると常に信じてきた教育者一家の一員として生まれました。
Q. 1日の流れはどのようなものですか?
典型的な1日の業務は、戦略の立案、コラボレーション、関係者との連携が混ざり合っています。多くの時間を州政府や教育機関のパートナーと過ごしてニーズを聞き取り、ピアソンVUEのサービスが最も重要な目的に沿っているか、すなわち、彼らを支援し、教員たちを支援し、最終的に学生の学びを支援することができているかを確認しています。また、社内のチームとも密接に連携しながら、新しい製品やサービスの革新を見直したり、運用の課題に取り組んだりして、パートナーが期待する高い品質とサービス水準を確実に提供できるように努めています。
同じくらい重要なのは、より広い視野で考える時間を確保することです。例えば、プログラムの成果をデータで確認すること、最新の政策や業界動向を把握すること、あるいは各州の教育の未来について政策立案者と意見交換することがあります。また、自分たちの活動が実際の教室とどのように繋がっているかを振り返ることもあります。取り組んでいる議題が何であれ、共通のテーマは常に同じです。それは、私たちの意思決定が教員の成功を支え、最終的に学生が学べるようにすることです。
Q. 評価システムは全米の多くの州と連携しています。これは非常に複雑で、絶えず変化する環境でなければなりません。リーダーとして、このような大規模かつ重要な現場をどのように導いていますか?
確かに、評価システムは複雑で絶えず進化し続けています。州ごとに独自の優先事項、ポリシー、そして教育制度に関するスケジュールがあります。また、州ごとに独自の戦略目標があるため、非常に重要度の高い現場でもあります。たとえば、教員が理解すべき最も重要な内容は何か、または(生徒のテストスコアに基づいて)改善に注力すべき分野はどこかといったことです。深刻な教員不足への対応の場合もあります。それぞれの州や地域は、管轄内の幅広い関係者の懸念に対処しなければならず、その政策判断は教員や支援する学生に直接影響します。教員免許試験で不合格になることは、その人が長年追い求めてきた職業に就くのを妨げてしまう場合もあります。こうした複雑さに対処するために、人材、クライアント、そして継続的な改善に重点を置いています。
まずは、州の教育指導者、教員養成機関の教授、そして現場の教員の声に丁寧に耳を傾けることから始めます。彼らの視点こそが、どの課題を解決すべきか、またどの分野でイノベーションが有効に作用するかを理解する手がかりとなります。そこから、信頼と透明性に基づいた強固なパートナーシップを築き上げ、州政府が私たちを単なるベンダーではなく、自らの成功に深く関わる協働パートナーとして認識してもらうようにします。そして最後に、柔軟性を保ち続けます。なぜなら、教育の政策や実践は常に変化しており、私たちも同じだからです。
Q. 試験が障害だと感じる人もいます。教員試験が「教育の質を確保するための仕組み」であることを、どのように理解してもらっていますか?
確かに、試験はプレッシャーのかかるものです。すでに多くの時間と労力をかけて教員を目指している受験者にとっては、越えるべき必要なハードルになり得ます。私たちの考え方としては、試験は障害物ではなく、すべての生徒が十分な知識を備えた能力の高い教師から学べるようにするための手段です。慎重かつ適切に設計された教員評価試験は、公平性を担保して社会を守ることにつながります。これにより、教員が将来教室に立つ前に、必要な知識と技能を確実に備えているかを確認することができます。これは生徒にとって重要なだけでなく、教員にとっても大きな意味を持ちます。「指導する準備ができている」と確信を持って教育分野の道に進むことは、自信と力を与えてくれます。
私たちの役割は、これらの試験に妥当性と信頼性があり、各州の政策目標に沿って設計されていることを確認することです。また、各州の政府や教員養成プログラムと緊密に連携し、「試験をただ通過すること」に集中するのではなく、「有益な教員として成長すること」に焦点を当てられるように適切なサポートを提供しています。結局のところ、試験とは信頼のことです。家庭、学校、そして地域社会に信頼感を与えるためのものです。初めて教壇に立つすべての教員が、生徒の指導と生徒の未来を支援する準備が整っているという信頼を確立することが、試験の目的なのです。
Q. AIによって、教員が教室で授業を提供する方法、そして生徒が教育を体験する方法がどのように変わるのかについては、現在も議論が続いています。このテクノロジーによってもたらされる最大のチャンスは何だと思いますか?また、AIの利用における効果的な安全策を設ける責任は誰にあると思いますか?
AI の利用が教育のあらゆる場面で加速していることは間違いありません。AI は、学習のあり方、授業のやり方、さらには試験の設計方法にまで大きな変化をもたらすでしょう。すでに、生成 AI を活用した生徒向けの学習ツールが広く使われ始めており、学習内容を生徒に合わせて変更したり、アイデアを出し合ったり、個々の目標を洗練したりするのに役立っています。実際、Microsoft の最近の「AI in Education 2025」(2025年の教育における AI)のレポートによると、教育機関の 86% がすでに生成 AI を活用しており、これはすべての産業の中で最も高い利用率です。ピアソンでも、高等教育機関での AI リテラシーへの需要が急速に高まっており、教室での学習をさらに深めようとする取り組みが拡大しているのを目にしています。
しかし、導入はあくまで出発点にすぎません。教育法(子どもを教える方法と実践)は、学習者のニーズに合わせて進化することができますし、進化すべきだと思います。AI には教育理論と成人教育理論(それぞれ若年層と成人学習者を支援する上で)において、「何が本当に効果的に機能するのか」という理解をさらに深める大きな可能性があると考えています。現在のツールを利用し、データや洞察を活用して、特定の教科、概念、および生徒ごとに成果を向上させる、効果的な指導戦略を構築することができます。
Microsoftのレポートでも次のように述べられています。「AIは強力な思考パートナーであり、能力を倍増させる存在になり得ます。アイデアを広げ、タスクを効率化し、教育と学習の新しい可能性を切り開きます」これは非常に刺激的なことですが、同時に重要な疑問も投げかけます。効果的な教育と学習とは、どのような姿でしょうか?有能な教師、慎重に設計された AI システム(、そして十分な支援)がなければ、テクノロジーは生徒や教育の成果にとって本質的なインパクトをもたらすことはできません。
だからこそ、AI の活用における適切な安全策の責任を一部のグループだけに委ねることはできません。政策立案者、教育のリーダー、技術提供者、そして教育者のそれぞれが AI が倫理的かつ透明性を保ち、そして何よりも効果的であることを確実にする役割を担っています。ピアソンはAIが教育の核心である「質の高い指導」と「真の学び」を支える存在となるために、教育機関や各州政府と連携しながら、慎重に革新を進めることが責任であると考えています。
Q. 有能な教師とはどのような人を指しますか?そしてAIが教育や教員者の役割を変えつつある中で、教師はどのようにして自分のスキルを適切に維持することができますか?特に、従来の標準化された指導法から、より個別化された指導法へと大きくシフトしている今、どのような対応が必要ですか?
有能な教師とは、単に自分の専門分野に精通している人ではなく、異なるタイプの生徒に効果的に教えられる人のことです。生徒がどのようにして概念を理解するのか、どの部分でつまずきやすいのか、そしてどの戦略や具体例が「腑に落ちる」理解へと導くのか、これらを把握できる能力です。
AI が教育を変革し、より個別化された学習の方向に急速にシフトしていく中で、このような教育学的な理解による把握力は、これまで以上に重要になっています。AI を使用すれば、教材の作成、学習成果のデータの分析、指針の提案を行うことができますが、それらの洞察を成長段階に合わせて生徒に最も効果的な形で活用する方法を判断するには、特定の教科に関する指導法を深く理解している教員の力が不可欠です。
将来的には、さまざまなコンテンツの特性に合わせて最も効果的な指導戦略をより深く理解していくにつれて、直接的な指導の支援に AI がさらに活用されるようになるでしょう。しかしながら、教育における最大の資産はやはり教員です。教員が学習の進捗を見守り、リアルタイムで介入し、そして生徒にとって「どのように学ぶのが最も効果的なのか」を見極めることで、人間としての深い洞察に基づく指導を提供することができます。
Q. AIの進化によって教員の認定資格は今後どのように変化していくと思いますか?
将来的には、より実践的で本当の能力を測る認定資格へと進化していくと思います。試験結果などの 1 つのデータに依存するのではなく、実際に生徒とどのように関わるか、授業をどのように設計するか、生徒のニーズにどのように対応するかといったプロセス全体を AI が記録および分析できるようになります。評価の焦点は「知識を思い出せるか?」から「学習を向上させる方法で知識を活用できるか?」へと移っていきます。
また、今後の教員の認定資格は、より継続的で個別化されたものになると見ています。教員免許制度はこれまで、教師が教壇に立つ前に最低限の基準を満たしていることを確認するためのチェックポイントとしての役割を果たしてきました。この安全策はこれからも不可欠ですが、AI の活用によって、さらに一歩進むことができるようになります。それは、教員がプロフェッショナルとして継続的に成長していく新たな機会を提供することです。
最後に、教員免許は、「生徒がどのように学ぶか」と「教師がどのように教えるか」という理解が急速に進化していく中で、これらを結び付ける上でますます重要な役割を担うようになります。一方で、責任の体制、カリキュラムの設計、教員の養成といったことについては、今後も規制や政策の枠組みによって形づくられていくでしょう。
しかし教育の未来は、イノベーション、政策、実践をいかに大胆に結びつけ、教員に力を与えて、学びの可能性を解放するかによって決まっていくでしょう。AI を責任ある形で活用し、教育学を常に中心に据えることで、教員と生徒の双方が成長できる未来の教室を実現することができます。
以下の見解は、教育分野における AI の潜在的な応用について、ピアソンVUE が探求している考えを反映したもので、現時点でのピアソンVUE の具体的な製品や機能を示すものではありません。
ピアソンVUE が取り組むすべての AI 関連業務は、適用されるデータ保護法およびピアソンVUE 独自の責任ある AI に関するフレームワークに準拠し、透明性、公正性、人間による監督を保証します。
本稿に述べられている意見は E.ワイアット・ゴードン博士個人の見解であり、必ずしもピアソンVUE の公式見解を代表するものではありません。